発行物

ニュースレター No.3


第1回全国大会案内

 高齢者や障害者も含めた、住みやすい社会の実現を目指して、様々な分野で進められてきた研究や実践を、有機的に結びつけた検討の場として、福祉のまちづくり研究会が1997年7月に発会し、1998年7月に第1回全国大会を行うことになりました。各分野からの議論を検討するため、ふるってご投稿・ご参加ください。

とき : 1998年7月31日(金曜日) 
ところ : キャロットタワー等
(東京都世田谷区三軒茶屋)
参加費: (資料集含む:但し基調講演のみ無料)
福祉のまちづくり研究会 正会員 5,000円
福祉のまちづくり研究会 非会員 7,000円
学生 2,000円

  ●●スケジュール(予定)●●   9:00- 受付
  9:30-10:15 福祉のまちづくり研究会総会
  10:30-11:30 基調講演
澤村誠志 兵庫県立総合リハビリテーションセンター
野村 歓 日本大学理工学部建築学科
  11:30-12:30 昼食
  12:30-14:15 論文発表 一人15分
(質疑応答含む)
  14:30-17:15 研究討論
  14:30-15:45 介護保険
  16:00-17:15 ユニバーサルデザイン
  17:30-19:00 懇親会

論文応募要領

応募要領
  1.論文発表 テーマ: 自由、既発表でもよい。可能であれば他分野との関連性を意識して書かれることが望ましい。
  2.研究討論 テーマ: 「介護保険が福祉のまちづくりにもたらすもの」(4頁参照)
「福祉のまちづくりにとってユニバーサルデザインが持つ意味」(5頁参照)
のいずれかに沿うもの。 
 これについては、個別の応募でも、複数の発表者をまとめての提案でもよい。なお、趣旨については、本ニュースの別項をご参照ください。 

 4.発表 申込書
  題名
  発表場所(どちらかに○をおつけください)
  論文発表
  研究討論
  発表者名(ふりがな)
  所属(ふりがな)
  連絡先、郵便番号、住所
  電話、FAX、E-mail
  キーワード(6つまで)
  内容要旨(200字程度 形式不問)
  申し込みがありましたら、執筆要項を事務局より送付します。   ▼▼▼▼▼演題申込・大会連絡先▼▼▼▼▼
  日本大学 理工学部 建築学科 野村研究室 気付
  福祉のまちづくり研究会第1回全国大会事務局
  〒101-8308 東京都千代田区神田駿河台1-8-14
  FAX:03-3293-8253
  E-mail:yatogo@arch.cst.nihon-u.ac.jp

障害者プランにもっと関心を

日本大学 野村 歓

 平成5年12月に公布された障害者基本法は、国に対して障害者基本計画の策定義務を、都道府県及び市町村に対して障害者計画策定の努力義務を課した。これに基づいて、国は「障害者プラン~ノーマライゼーション7カ年戦略~」をとりまとめ、施策の推進を図っている。この障害者プランは、「地域で共に生活するために」「社会的自立を促進するために」「バリアフリー化を促進するために」「生活の質の向上を目指して」「安全な暮らしを確保するために」「心のバリアを取り除くために」「我が国にふさわしい国際協力・国際交流を」を骨格としており、これこそ我々が目指す「福祉のまちづくり」の理念と一致していると思われる。

 福祉のまちづくり運動がスタートした昭和40年代中ばの頃、福祉のまちづくりイコール物理的環境の整備といった狭い範囲でとらえられていたのだが、現在の「福祉のまちづくり」は、地域社会に居住する障害を持つ者や高齢者を含めたすべての市民の社会参画を、あらゆる場面で実現し得る配慮が求められている時代なのである。となると、福祉のまちづくりが進展すれば障害者プランを後押しすることになるし、障害者計画が市町村レベルでより多く実施されれば、福祉のまちづくりは自ずと進展することになる。

 しかし、残念ながら、市町村段階の策定状況は、総理府の平成9年3月の調査では全国3243市町村のうち581市町村(17.9%)にとどまっている。私たちは、自分の居住地域の障害者計画を知っているだろうか。一度確認して欲しい。仮に障害者計画が未実施の場合には声高らかに計画策定を叫ぶべきではないだろうか。

福祉のまちづくり研究会発足によせて

兵庫県立総合リハビリテーションセンター
所長 澤村 誠志

 私は、過去40年間、整形外科医として障害を持つ人々のリハビリテーションの現場の中で多くのことを学んできた。特に、障害を持つ人々が、地域の中で尊厳を持って生き続けることのできる最も重要な条件は、まず、生活の基盤となるバリアフリーの住宅と24時間に亘るケアの確保、そしてこれらを支え、さらにQOLの向上を目指す雇用の確保にあることを学んだ。このことを如実に実証したのが阪神・淡路大震災であった。震災という篩いにかけられ上記の条件の不備が顕在化した。その反面、優れたネットワークを持っていたコミュニティは、ふるい落とされることなく、ボランティア活動などの支援を得て再生の途についた。

 大震災前の普段の生活において、車椅子を利用している人々が民間のアパートのほとんどの家主より賃貸が断られていた事、また、殆どの交通機関が、震災前から障害を持つ人々にとって大きなバリアとなって利用できていなかった現実を見逃してはならない。点字ブロックが稀にしか見当たらないヨーロッパ諸国を旅行したわが国の目の不自由な人々や車椅子を利用している人々が、一様に人々の心の暖かさを感ずると述べている。わが国の道路は狭いし、凸凹が多くあるが、これ程多くの点字ブロックがあり、段差の切り下げをやっている国はないと思っているが、それでもなお、障害を持つ人々にとって、私どもの住むコミュニティが冷たい社会環境と受けとめられているのは何故だろうか。もう一度考え直す必要があるように思われる。バリアフリーは決して住宅、道路、交通機関、公園、公共建築物などハード面だけの論議に終始してはならない。これに震災の時に経験した、ソフト面における一般の人々のボランティア活動を通じての福祉マインドの育成がまず大切であろう。介護を必要とする高齢者や障害を持つ人々が、住み慣れた地域で安心して住み続けることのできるまちづくりをすすめるためには、多くのハード、ソフト両面からの整備が必要となる。これには、わが国の経済重視より生活重視への施策の変換、市町村長の姿勢、非効率な縦割り行政の是正、保健・医療・福祉のネットワークと24時間の総合的なケアサービスとその地域安心拠点の整備、住宅改造、福祉用具を含めたテクニカルエイドセンターとシステムの整備、専門職マンパワーの確保とその不足分を補うボランティア活動などがあげられよう。

 「明日はわが身」である。福祉のまちづくり研究会が設立されたこの機会にハード面の担当者とソフト面でのサービス提供者が研究討議の場を共有し、障害を持つ当事者の参加の中で経験を活かし合う場として育っていくことを期待したい。

公的介護保険が福祉のまちづくりにもたらすもの

日本女子大学社会福祉学科
小山 聡子

 近年の少子化や共働き家庭の増加、高齢人口の急速な増加等を背景として、公的介護保険そのものには世論調査でも高い支持が表明されている。しかし、1997年12月に成立した法律の内容にはさまざまな面で懸念の声も強い。

 ともあれ、2000年より実施される見通しとなった介護保険の内容は、次のようになっている。

 (1) 保険の運営主体は、市町村と東京都の23区。
  (2) 財源は、国が25%、都道府県と市町村が各12.5%、保険料が50%。
  (3) 対象者は65歳以上(第1号被保険者)と40歳以上64歳未満(第2号被保険者)で、前者の保険料は所得に応じて5段階に設定。後者の保険料は医療保険料と一緒に徴収。
  (4) 給付内容は、在宅ケアがホームヘルプ、訪問介護、訪問入浴、訪問や通所のリハビリサービス、デイサービス、ショートステイ、居宅療養管理指導、居宅介護住宅改造、居宅介護福祉用具購入等。一方、長期入所の施設ケアは、特別養護老人ホーム、介護療養型医療施設、介護老人保健施設の3施設ケア。
  (5) 手続きは、要介護認定を受け、ケアマネージャーと相談の上で適切なケアプランを作成し、費用の1割を自己負担して、必要なサービスを選択するといった方法である。

 本構想に関する論点がさまざまに取りざたされる中で、福祉のまちづくりという学際的視点で検討すべき課題がいくつも考えられる。例えば、選択の元となる介護サービス資源そのものが、市町村の老人保健計画の遅れなどによって危ぶまれている。24時間どこでも対応できる介護態勢を、質・量ともに保証してゆくにはどうすればよいのか。そして要介護認定制度をめぐり、ケアマネジメントの客観性や妥当性についてもさらに論議が必要である。今後、在宅、施設どちらの生活においても介護方法や住宅改造、施設空間づくりを再検討する中からQOLの向上を求めてゆかねばならない。そもそも「介護」とは何ぞやというあたりを含め、福祉のまちづくりならではの視点から論じてみたい。

福祉のまちづくりにとってユニバーサルデザインが持つ意味

建設省建築研究所
古瀬 敏

 これまではバリアフリーが主たるキーワードだった福祉のまちづくりだが、このところユニバーサルデザインということばが聞かれるようになってきた。この2つはどこがどう違うのだろうか? そして、ユニバーサルデザインが福祉のまちづくりに与える影響は何だろうか?

 ユニバーサルデザインが目指すのは、誰にとっても使いやすいもの、できるだけ多くの人をカバーするものの実現である。さまざまな製品、住宅、建築、交通機関、さらには都市、こうした生活に欠かせない環境全般が、実は使いにくい、暮らしにくいというのを全面的に変えようという主張だ。

 バリアフリーの概念がどうしても障害者と切り離せない形で議論されていたのに比べると、ユニバーサルデザインは障害者の存在を前提にしない。むしろ、私が使いにくい、あなたが使いにくい、という問題意識が出発点である。そして、そこに時間軸が加わる。つまり、今はいいがあと5年経ったら、あるいは10年経ったら、その時点でも問題はないのかという問いかけがされる。そこでノーといわれれば、じゃあ変えようということになる。したがって、指摘される内容は、あらゆる範囲にわたるものであって、バリアフリーのシンボルマークになっている車いす、あるいは視覚障害、聴覚障害対応には限らない。その指摘はもっと些細なことから、しかしその不都合を見逃さないことから、始まる。

 これまでの「障害者対応」と、ユニバーサルデザインとの本質的な違いはどこにあるのかといえば、それは事前の準備の発想に立つのかそれとも事後の対処を基本にするのか、にあるといえよう。もちろん、現実の環境は既にできている場合が多い。しかし、新たなものを導入するに際して一般的な意味での使いにくさをできるだけ排除するという努力をすること、そしてその過程によってユーザーとのミスマッチが生じて事後の特殊解的な対処が必要になる局面を減らしておこうというのが、ユニバーサルデザインの考え方である。

 こういった考え方が福祉のまちづくりに何をもたらすのか、今度の大会における研究討論会で議論してみたい。

参考資料
バリアフリーからユニバーサルデザインへ、えぴすとら第19号、建設省建築研究所、1997.11

【事例紹介】近鉄京都線新田辺駅エレベーター設置工事

関西シンポジウム(第1回)開催案内

福祉のまちづくり研究会   関西シンポジウム(第1回)開催

  テーマ: 21世紀の関西の福祉のまちづくりの展開 -震災をのりこえて-
  とき : 1998年3月9日(月)
  ところ : 建設交流館
  〒550 大阪市西区立売堀2-1-2
  TEL:06-543-2551  FAX:06-543-2050
  参加費 :無料

<会場案内図>

  ~バスにてご来場の場合~
    市バス 大阪駅前より75系統(鶴町4丁目行)「立売堀2丁目」バス停下車すぐ 所要時間約20分 
    市バス リフト付きバスは3号幹線系統が以下のルートで巡回しています.
大阪駅前→淀屋橋→本町→心斎橋→なんば→JR難波駅→四ツ橋→信濃橋→肥後橋→大阪駅
3号系統に乗車された場合は「立売堀1丁目」バス停下車徒歩5分 
参加ご希望の方は,FAX,郵便または電子メールにて下記にご連絡下さい。

▼▼▼▼▼▼▼参加申込先▼▼▼▼▼▼▼

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-1
大阪大学工学部土木工学科 飯田 克弘 宛
TEL:06-879-7610 FAX:06-879-7612
E-mail:iida@civil.eng.osaka-u.ac.jp

  プログラム :(受付開始は10:30~,以下敬称略) 
1) 開会挨拶 10:50~11:00
  三星昭宏(近畿大学) 
2) 基調講演 11:00~12:00
  定藤丈弘(大坂府立大学) 
3) 報告 13:00~14:40
 「福祉のまちづくりの現状と課題」 (a) 福祉のまちづくり条例の現状と今後   荒木兵一郎(関西大学) 
(b) 兵庫県の福祉のまちづくり    相良二朗(福祉のまちづくり工学研究所)
(c) 交通からみた福祉のまちづくり   三星昭宏(近畿大学)
(d) 地域ケアと福祉のまちづくり   山本和儀(大東市福祉保健部)
(e) 震災から学ぶ当事者主体のまちづくりを目 指して   佐藤 聡(メインストリーム協会)
4) 質疑応答 14:40~15:00
5) 休憩 15:00~15:15
6) パネルディスカッション 15:15~16:45
「21世紀の地平を切り開く」
司  会/ 北野誠一(桃山学院大学)
パネラー/ 関 宏之(大阪市障害更生文化協会)
  尾上浩二(障害者総合情報ネットワーク)
  新田保次(大阪大学)
  馬場昌子(関西大学)
7) 閉会挨拶 16:45~17:00
  三星昭宏(近畿大学)