学会賞

学会賞選考結果・講評

第14回(2023年度)学会賞 決定のお知らせ

2023年07月14日

一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 会員各位

一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 佐藤克志
学会賞選考委員会委員長 長谷川万由美

 学会賞選考委員会による厳正な審査の結果、日本福祉のまちづくり学会、第14回学会賞受賞者を次のとおり決定しました。

(1)学術賞

○選考過程
 福祉のまちづくり研究(第23巻Paper号(2021年度)及び第24巻Paper号(2022年度))に掲載された11編の原著論文を対象とし、選考委員会で審議し、信頼性・妥当性・新規性・分野間連携等において総合的に優れた内容を有する論文として、次の1編を表彰に値すると判断した。

  1. 石塚裕子・東俊裕:『避難行動要支援者の実態と課題-2018年西日本豪雨 倉敷市真備町の事例から-』 
     (福祉のまちづくり研究, 第23巻, 2021年12月1日発行)

○選考評
 本研究は、2018年西日本豪雨の被災地である倉敷市真備町を対象として、避難できずになくなった障害者等と助かった障害者等の比較ならびに福祉事業者、地域コミュニティにおける避難行動支援の実態を検証したものである。その結果、誰ひとり一人では避難する者はなく、誰もが助かる社会を実現するために自助・共助が必要であることに加えて、公助として個別避難計画策定に取り組む必要があることを指摘している。新聞社との協定により入手した取材記録を資料として死亡事例を調査することにより、亡くなられた方の家族構成や家屋状況の実態が具体的に示されており、他に例を見ない貴重な研究である。また、被害者調査にとどまらず福祉事業者や迅速な避難行動支援に最も期待が寄せられる民生委員や自主防災組織役員に対する調査も実施し、総合的に支援の在り方を検討している点も評価できる。取材記録をデータに用いた分析であるため個々の事例について深く分析するには至っていないが、災害時の障害者等の避難を新たな視点で捉え直してデータに基づき丁寧に論を展開した、優れた論文であると判断される。以上、学術賞に相応しいものと評価する。

(2)市民活動賞

○選考過程
 2023年1月26日付け会告により、募集開始し、各支部長等にも推薦を依頼した。3月31日の締め切りまでに3件の応募があった。選考委員会でこの3件について一次審査を行った結果、全団体が一次審査を通過し、二次審査として、Zoomにて各団体のインタビューを選考委員が行った。「主体の当事者性」、「活動開始と継続の経緯」、「具体的活動内容と実施の頻度と年数」、「多様な人々の連携のあるなし及び関与する人数」、「展開する活動の内容とバラエティ・活動の成果(質的量的な波及効果)」、「他の類似活動と比較した場合の優位性」といった基準に関して、委員会で審査した結果、それぞれ、当事者による情報発信、共生によるイベント活動、人材育成とその活用という異なる点から福祉のまちづくりに資する活動に取り組んでいると認められ、二次審査を行った1件を表彰に値する活動と判断した。

  1. 活動名:「誰にもやさしいまちづくり活動」
    団体名:特定非営利活動法人カムイ大雪バリアフリー研究所(旭川市)
    団体代表者:理事 五十嵐真幸

○選考評
 SDGsの「3.すべての人に健康と福祉を」「4.質の高い教育をみんなに」「11.住み続けられるまちづくりを」を目標ターゲットに掲げ、SDGsで目標とされる誰も取り残されない共生社会の実現に向けて、スポーツや文化活動を共に楽しみことができる誰もが暮らしやすい地域づくりに取り組んでいる。2009年からのお祭りにおける誰もがかつげるUDみこしの実施、2015年からの地域の就学前後の障害児を対象とする持続可能なSSTの実践や、2017年からのボッチャ選手権大会の実施などの他、様々に多岐な活動を、地域の産業界や行政とのしっかりとした連携のもと実施している。また、資金面での基盤確立のため、就労継続支援施設A型、B型「チーム紅連」を立ち上げて、着実に運営しながら資金面での自立と障害者の雇用の創出にもあたってきている。障害当事者を中心とした活動のひろがりや地域に根差したネットワークづくりとその活用など、SDGsのターゲットにある誰も取り残さない「誰にもやさしいまちづくり」の実践は、他のまちづくりに関する活動を行う団体の模範となるものであり、市民活動賞に十分に値する活動である。

学会賞選考委員会
 長谷川万由美(委員長)
 鈴木克典
 三宮基裕
 須田裕之
 中野ひとみ
 丹羽太一
 松田雄二
 山岡俊一

第13回(2022年度)学会賞 決定のお知らせ

2022年8月18日

会員各位

一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 佐藤克志
学会賞選考委員会委員長 長谷川万由美

 学会賞選考委員会による厳正な審査の結果、日本福祉のまちづくり学会第13回学会賞を次のとおり決定しました。

(1)学術賞

今年度は選考しない

(2)市民活動賞

○選考過程
 2022年1月12日付け会告により、募集開始し、各支部長等にも推薦を依頼した。3月31日の締め切りまでに5件の応募があった。選考委員会でこの5件について一次審査を行った結果、3団体が一次審査を通過し、二次審査として、Zoomにて各団体のインタビューを選考委員が行った。「主体の当事者性」、「活動開始と継続の経緯」、「具体的活動内容と実施の頻度と年数」、「多様な人々の連携のあるなし及び関与する人数」、「展開する活動の内容とバラエティ・活動の成果(質的量的な波及効果)」、「他の類似活動と比較した場合の優位性」といった基準に関して、委員会で審査した結果、それぞれ、当事者による情報発信、共生によるイベント活動、人材育成とその活用という異なる点から福祉のまちづくりに資する活動に取り組んでいると認められ、二次審査を行った3件すべてを表彰に値する活動と判断した。

  1. 活動名:障害のある人たちによる障害のある人の自立支援と生活環境改善活動
    団体名:NPO法人 障害者自立応援センターYAH!DOみやざき(宮崎県)
    団体代表者:理事長 岩切文代

○選考評
 本団体は、全国自立生活センター協議会(JIL)の一員として、障害のある人自身がサービスの担い手になり、障害のある人の自立に向けた支援や自立生活後の介助者派遣、自立生活に関する情報提供、そのほかの相談に応じる活動を行っている団体である。その活動の一環として、2019年には宮崎県の「みやざきアクセシビリティ情報マップ」の改定作業を(一社)宮崎県建築士会・㈱ポップミックスとの3者協定の下で行ったり、宮崎県観光協会内の「宮崎ユニバーサルツーリズムセンター」における事業のサポートを行ったりするなど、地域の多様な組織と連携して障害者が暮らしやすいまちづくりに資する活動を行っている。さらにJICAを通じた国際交流の中から、パキスタンの障害女性の支援にも携わっている。障害当事者が中心となった活動であり、社会に対する情報発信もなされており、市民活動賞に値すると判断した。

  1. 活動名:ホッチポッチミュージックフェスティバル
    団体名:ホッチポッチミュージックフェスティバル実行委員会(横浜市)
    団体代表者:実行委員会事務局 長谷川 篤司

○選考評
 「ホッチポッチミュージックフェスティバル」は、2009 年から毎年秋の週末に、横浜市内の公園や駅前広場、公共施設の屋外エントランスなどを会場として開催されている音楽イベントである。演奏ジャンル・国籍・世代・性別・障害の有無などのあらゆる垣根を取り払い、音楽が好きな人はもちろん、普段音楽を聴く機会が少ない人も一緒になって楽しめることを目指している 。当初は音楽ジャンルの多様性に重点を置いていたが、活動の進展とともに、演奏者、観客、運営スタッフの多様性を実現するよう着実に活動を積み重ねてきている。地域の様々な団体が参加する実行委員会形式で行われ、実行委員会のメンバーが、毎月のように障害のある方々を講師とする勉強会を開催して音楽祭のユニバーサルデザインに向けて取り組んでいる。また、コロナ禍においても様々な工夫をしながら継続して開催しており、イベント型の活動を継続しようとしている他の団体の模範にもなるものと考えられる。障害の有無にかかわらず多様な人々が、イベントの参加者だけでなく企画・運営にも関わり、それぞれができることに取り組む姿勢は、共生社会に向けたヒントを与えてくれるものであり、市民活動賞に十分値する活動である。

  1. 活動名:「観光介助士」制度による人材育成
    団体名:一般社団法人 日本UD観光協会(札幌市)
    団体代表者:代表理事 林克郎

○選考評
 観光立国であるこれからの日本において、全ての人が安全・快適に観光ができるユニバーサルデザイン観光(UD観光)の普及と促進を行うことを目的として、2007年より、活動の前身となる旅行会社、(株)HKワークスで、障害の有無にかかわらず旅行を楽しめるバリアフリー旅行に特化したツアーを催行してきた。2011年には継続的な活動の基盤として一般社団法人日本UD観光協会を設立し、当事者も参加した実地研修などを通じて旅行と介護のプロフェッショナルとして観光介助士(2012年に商標登録)を育成している。今までに合計1,036名の資格認定者を育成・輩出し、滝上町と連携した4年にわたる養成や札幌駅でのバリアフリーツアーデスクの開設など活動の幅を広げている。また、観光地における災害時避難バリアフリー対応マニュアルを作成するなど、活動を通して得られた知見を全国に向けて発信している。民間団体による人材育成とその人材を活かした観光支援の実施、さらに将来的には全国各地のユニバーサルデザイン観光団体のネットワークの構築を通して、誰もが自由に観光できる社会を目指している点から、市民活動賞に十分に値する活動である。

学会賞選考委員会
 長谷川万由美(委員長)
 鈴木克典
 三宮基裕
 須田裕之
 中野ひとみ
 丹羽太一
 松田雄二
 山岡俊一

第12回(2021年度)学会賞 決定のお知らせ

2021年09月16日

一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 会員各位

一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 佐藤克志
学会賞選考委員会委員長 長谷川万由美

 学会賞選考委員会による厳正な審査の結果、日本福祉のまちづくり学会、第12回学会賞受賞者を次のとおり決定しました。

(1)学術賞

○選考過程
 福祉のまちづくり研究(第21巻2号(2019年7月)から第23巻Paper号(2021年3月))に掲載された8編の原著論文を対象とし、選考委員会で審議し、信頼性・妥当性・新規性・分野間連携等において総合的に優れた内容を有する論文として、次の2編を表彰に値すると判断した。

  1. 石塚 裕子:『災害と障害-インクルーシブな防災を実現するための視座-』
     (福祉のまちづくり研究, 第21巻3号, 2019年11月15日発行)

○選考評
 本研究は、災害時の障害に着目し、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震における障害当事者の提言の整理と、熊本地震における障害者の避難実態調査および課題の整理を通して、インクルーシブな防災を実現するためには災害に備えた地域づくりに多様な人々が参画するプロセルが必要であることを提言したものである。阪神・淡路大震災以来25年を経ても、災害時の障害という問題が未だに解決できていないという認識から、災害と障害を新たな視点で捉え直して論を展開した、優れた論文であると判断される。以上、学術賞に相応しいものと評価する。

  1. 土橋 喜人, 鈴木 克典, 大森 宣暁:『公共交通機関の優先席の実効性に関する考察-札幌市営地下鉄の専用席と関東圏地下鉄の優先席の比較調査より』
     (福祉のまちづくり研究, 第22巻1号, 2020年3月15日発行)

○選考評
 本研究は、我が国で唯一「専用席」の名称を有する札幌市営地下鉄と、関東圏の地下鉄を対象に、公共交通機関の優先席の実効性を検証したものである。札幌市営地下鉄に関する過去の資料の入念な調査と広範にわたる関係者へのインタビュー調査によって、専用席導入の社会的背景を解明し、車内観測調査およびアンケート調査により、優先席の利用実態と優先席に対する意識を明らかにした。これまで十分な研究の蓄積がない優先席に着目し、我が国において心のバリアフリーを浸透させる上でも有益な知見が得られた論文であると判断される。以上、学術賞に相応しいものと評価する。

(2)市民活動賞

○選考過程
 2021年1月13日付け会告により、募集開始。各支部長等にも推薦依頼。3月31日に応募の締め切り。応募件数3件。選考委員会内での審議およびZoomヒアリングにより、「主体の当事者性」、「活動開始と継続の経緯」、「具体的活動内容と実施の頻度と年数」、「多様な人々の連携のあるなし及び関与する人数」、「展開する活動の内容とバラエティ・活動の成果(質的量的な波及効果)」、「他の類似活動と比較した場合の優位性」に基づいて、表彰対象を吟味。各委員からの意見を集約し、次の2件を表彰に値すると判断した。

  1. 活動名:知的障害者等への「わかりやすい」情報の提供・普及活動
    団体名:一般社団法人スローコミュニケーション(横浜市)
    体表者:代表理事 野澤和弘

○選考過程
 本団体は、知的障害者の権利擁護や「わかりやすい」情報提供の研究に関わってきた研究者・福祉関係者らが中心となって、2016年に設立された。代表理事の野澤氏は、1996年から知的障害者の親の会である全日本手をつなぐ育成会で発行されていた知的障害者向けの新聞「ステージ」の創刊に関わり、2014年の休刊後も知的障害者向けに時事情報を届ける媒体が必要との思いから本団体の設立に至った。主な活動として、話題のニュースや障害者に関連のあるニュースに振り仮名と音声を付けた「わかりやすいニュース」を、週1回、ウェブサイトと専用アプリに配信している。また、各種パンフレットなどの「わかりやすい版」の編集も行い、文部科学省の生涯学習啓発リーフレット、横浜市のDV相談、避難行動計画、住宅防火などのパンフレット、豊田市の成年後見制度利用促進計画に関するパンフレット等を受託している。その他、福祉事業所や公共施設職員などに対して、情報保障のあり方や「わかりやすい」情報提供に関する研修、書籍や冊子の発行などの活動を行い、知的障害者等に対する情報面での合理的配慮を促進する上で重要な役割を果たしている。以上、市民活動賞に相応しいものと評価する。

  1. 活動名:脊髄損傷者及び重度身体障害者の社会参加の促進、福祉の増進活動
    団体名:特定非営利活動法人沖縄県脊髄損傷者協会(沖縄県浦添市)、
    体表者:理事長 仲根 建作

○選考過程
 1984年に発足した団体であり、計80名の会員の多くは車椅子や電動車椅子利用者である。行政、大学、他の当事者団体等と連携・協力して、障害当事者視点でのバリアフリーに関わる調査や研究、啓発、政策提言など、多面的なバリアフリー活動を活発に行っている。具体的には、投票所、道路・歩道、ノンステップバス路線計画、モノレール駅、銀行のATMや点字案内板、障害者用駐車場等のバリアフリー化において、重要な役割を果たした。その他、「沖縄県障がい者スポーツ協会」の設立、障害者就労支援事業所「障がい者Tサポートおきなわ」の開設、ITを活用した社会参加推進のための活動、マスメディアやSNSによるバリアフリー情報の発信、沖縄県の障害者行政計画に対する当事者意見反映のためのネットワークづくりなど、沖縄県内障害者団体の中核的役割を担っている。以上、市民活動賞に相応しいものと評価する。

学会賞選考委員会
 長谷川万由美(委員長)
 鈴木克典
 三宮基裕
 須田裕之
 中野ひとみ
 丹羽太一
 松田雄二
 山岡俊一

第11回(2020年度)学会賞 決定のお知らせ

2020年8月4日
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 会員各位
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 小山聡子
学会賞選考委員会委員長 大森宣暁

学会賞選考委員会による厳正な審査の結果、日本福祉のまちづくり学会、第11回学会賞受賞者を次のとおり決定しました。

(1) 学術賞

今年度は選考しない

(2)市民活動賞

○選考過程
 2019年12月25日付け会告により、募集開始。各支部長等にも推薦依頼。2月28日に応募の締め切り。応募件数3件。選考委員会内での審議および現地調査により、「主体の当事者性」、「活動開始と継続の経緯」、「具体的活動内容と実施の頻度と年数」、「多様な人々の連携のあるなし及び関与する人数」、「展開する活動の内容とバラエティ・活動の成果(質的量的な波及効果)」、「他の類似活動と比較した場合の優位性」に基づいて、表彰対象を吟味。各委員からの意見を集約し、次の2件を表彰に値すると判断した。

  1. 活動名:認知症があっても自分らしく生きるための包括的な支援体制
    活動団体名:医療法人大誠会グループ(群馬県沼田市)
    代表者:理事長 田中志子

○選考評
 病院開設より約40年、「地域といっしょに。あなたのために。」の理念のもと、病院を母体とし、社会福祉法人、NPO法人の運営も行い、医療や福祉の専門性を活かしながら、誰もが住みやすい地域づくりに取り組んでいる。特に2002年より、認知症患者のBPSD(周辺症状)の軽減や活動性・自立度の向上のためのケアや支援を「大誠会スタイル」として確立し、全国の病院や施設から毎年多数の見学者が訪れている。また、軽度認知症高齢者に対してドライブシミュレーターを使用した運転能力評価や機能訓練を行うことで、事故防止対策や運転免許返納支援等を行う「ドライバーリハビリ」と「運転免許塾」は、マスコミにも何度か取り上げられている。その他、高齢者と子供が同じ環境で交流する仕組みの創設をはじめ、認知症がある人も住みやすいまちづくりのために、職員が専門性を持って様々な活動を行っている。以上、市民活動賞に相応しいものと評価する。

  1. 活動名:住宅へのUD導入と啓発活動
    活動団体名:ユニ・ハウス研究会(熊本県熊本市)
    代表者:会長 山鹿眞紀夫

○選考評
 平成8年に「家を人に合わせて造り、ひとが暮らしやすくなる。」というコンセプトのもと、建築・保健・医療・福祉関係者が集まり、障害者・高齢者の個々に適した住み良い家づくりを提示すべく本研究会を発足させた。平成9年、病院内に、退院後に住宅改造が必要となる入院患者のために、壁や手すり等の位置の変更が可能で家族と体験宿泊もできるユニ・ハウス(自立生活住宅)を建設し、平成19年まで多くの患者に利用された。また、毎年開催している住環境に関する市民向けの公開セミナー・シンポジウム、他県の住環境研究会との交流会、住宅改善相談、県内の高齢者向け住宅・有料老人ホームの施設見学などの地域実践活動を、医療、リハビリテーション、保健師、建築関係など、様々な専門家との連携により取り組み、地域における自立生活を支援するための啓発活動を長年に渡り継続している。以上、市民活動賞に相応しいものと評価する。

学会賞選考委員会
 大森宣暁(委員長)
 秋山哲男
 長谷川万由美
 岩浦厚信
 岡正彦
 山岡俊一

第10回(2019年度)学会賞 決定のお知らせ

2019年7月9日
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 会員各位
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 小山聡子
学会賞選考委員会委員長 大森宣暁

学会賞選考委員会による厳正な審査の結果、日本福祉のまちづくり学会、第10回学会賞受賞者を次のとおり決定しました。

(1) 学術賞

○選考過程
 福祉のまちづくり研究(第19巻2号から第21巻1号)に掲載された10編の原著論文を対象とし、選考委員会で審議し、信頼性・妥当性・新規性・分野間連携等において総合的に優れた内容を有する論文として、1編を表彰に値すると判断した。

  1. 松村暢彦:『心のバリアフリー施策に関する行政担当者の意識構造』
    (福祉のまちづくり研究,  第19巻2号, 2017年7月15日発行)

○選考評
 本研究は、全国の市町村のバリアフリー担当者に対するアンケート調査によって、心のバリアフリー施策の実態を把握し、心のバリアフリー施策に関する行政担当者の意識構造を明らかにしたものである。分析の結果、行政担当者の自己効力感を高めることが心のバリアフリー施策の促進に重要であること、バリアフリー基本構想策定および事後評価が行政担当者のパーソナルネットワークの形成機会となり、自己効力感を高める上で実践的な方策であることを見出している。これまで研究が不十分であった心のバリアフリーに着目し、バリアフリー基本構想の意義や今後の展開の方向性など実務的にも有益な知見が得られた論文であると判断される。以上、学術賞に相応しいものと評価する。

(2)市民活動賞

○選考過程
 2018年12月14日付け会告により、募集開始。各支部長等にも推薦依頼。2月28日に応募の締め切り。応募件数3件。選考委員会内でのメール審議および現地調査により、「主体の当事者性」、「活動開始と継続の経緯」、「具体的活動内容と実施の頻度と年数」、「多様な人々の連携のあるなし及び関与する人数」、「展開する活動の内容とバラエティ・活動の成果(質的量的な波及効果)」、「他の類似活動と比較した場合の優位性」に基づいて、表彰対象を吟味。各委員からの意見を集約し、次の2件を表彰に値すると判断した。

  1. さっぽろ雪まつり福祉ボランティアハウス「ボランティアサークル手と手」の運営・継続
    活動団体名:特定非営利活動法人手と手
    代表者:代表理事 淺野目 祥子

○選考評
 1990年に、第41回さっぽろ雪まつり「ボランティアハウス」の運営に携わった方々が中心となって、その活動・運営を継続するため「ボランティアサークル手と手」を発足した。その後、さっぽろ雪まつり大通会場に「福祉ボランティアハウス」を設置し、障害当事者を含むサークルのメンバーが中心となって毎年ボランティアを募集し、介助が必要な雪まつり見学者と「一緒に雪まつりを楽しむ」ことをコンセプトに、車いす介助の他、雪用車いす、雪用杖、車いす防寒着の貸出やホテルまでの送迎など、約30年の長きに亘り活動・運営を継続的に行っている。その他、障害者の就労継続支援A型およびB型の多機能型事業所「就労支援センターしずく」の運営、ユニバーサルマンションの設置、学生・大学関係者と障害者の関わりを持つ場の創出として北海道大学総合博物館内のカフェとショップの運営、ネパール脊髄損傷スポーツ協会へ車いすを提供・運搬する活動、バリアフリー促進に向けた学校や企業等への講師派遣等、障害者の理解や自立に関する多様な活動に積極的に取り組んでいる。以上、市民活動賞に相応しいものと評価する。

  1. 発達障害当事者会主体の三位一体地域協働・共助活動
    活動団体名:
    熊本県発達障害当事者会Little bit
    NPO法人凸凹ライフデザイン
    発達協働センターよりみち
    代表者:共同代表  須藤雫・相良真央・山田裕一

○選考評
 2011年に設立された発達障害当事者主体の「発達障害当事者会Little bit」を起源とし、2015年に設立された「NPO法人凸凹ライフデザイン」、2016年に障害者の相談支援事業所として設立された「発達協働センターよりみち」の3団体による、地域協働・共助活動である。月2回の定例会の開催、講演会等の主催、民間企業との協働事業や全国の福祉・教育・医療行政機関から依頼を受けた研修の実施、行政委員への参画など、発達障害への理解を広める活動に取り組んでいる。2016年の熊本地震の際には、「発達障害者当事者マニュアル」の作成・配布による避難所生活をする発達障害者の支援、避難所生活が困難な当事者のために自宅を開放した「シェルター活動」など、3団体が連携して、行政や支援機関が手の届かなかった発達障害当事者への「共助活動」を行った。発達障害当事者間の連携活動の困難さにも拘わらず、複数の事業や団体をコーディネートさせながら、継続的に特色のある活動に取り組む数少ない成功例であり、社会への波及性に富んだ優れた市民活動である。以上、市民活動賞に相応しいものと評価する。

学会賞選考委員会
 大森宣暁(委員長)、秋山哲男、磯部友彦、狩野徹、長谷川万由美、岩浦厚信

第九回(2018年度)学会賞 決定のお知らせ

2018年7月9日
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 会員各位
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 小山聡子

 学会賞選考委員会による厳正な審査の結果、日本福祉のまちづくり学会、第九回学会賞受賞者を次のとおり決定しました。
 なお、表彰式は、2018年8月9日(木)17:00から兵庫県神戸市において、日本福祉のまちづくり学会第21回全国大会(in関西)の行事として実施いたします。

(1) 学術賞

今回は選考を実施しませんでした。

(2) 市民活動賞

1)
活動名:視覚障害者の地域での自立生活に向けた多様な活動
活動団体名:眼の会
代表者:榊原道眞
2)
活動名:長年に渡る障害者の自立支援と共生社会活動
活動団体名:わらじの会
代表者:藤崎稔

○選考過程
 2018年1月29日付け会告により、募集開始。各支部長、特別研究委員長等にも推薦依頼。
3月30日に応募の締め切り。応募件数4件。
選考委員会内でのメール審議および現地調査により、以下の項目に基づいて、表彰対象を吟味。「主体の当事者性」、「活動開始と継続の経緯」、「具体的活動内容と実施の頻度と年数」、「多様な人々の連携のあるなし及び関与する人数」、「展開する活動の内容とバラエティ・活動の成果(質的量的な波及効果)」、「他の類似活動と比較した場合の優位性」。各委員からの意見を集約し、上記2件を表彰に値すると決定した。

○選考評

1)
2009年に設立された視覚障害当事者の団体であり、「視覚障害者がより暮らしやすい環境づくりを目指して」を目標に、兵庫県神戸市を中心に、医療・福祉機関、研究機関等の様々な組織と連携して活動を展開している。年一回「見ることに不自由さを抱えた方を対象とした機器展」の開催、医療、福祉、教育、ボランティア関係者を対象とした災害時を含めた視覚障害者の理解と支援法の研修会の開催、合理的配慮に関する啓発パンフレット「視覚障害者からのメッセージ」の作成・発行等を行っており、これらの活動は、一般の方への参加を広く呼び掛けて、視覚障害への理解を深めようとしている点も特徴である。以上、視覚障害者のQOL向上を目指して、地域に根差しながら様々な関係者との連携を作り、行政への提案と啓発を行っており、市民活動賞に相応しいものと評価する。
2)
1978年に、埼玉県越谷市及び周辺地域で生活する障害者とその支援者らが設立した、障害のある人とない人の共生を掲げた、埼玉県内でも最も古い障害者団体である。設立以降40年間、市内で多様な自主事業を展開し、同時に県内でも他の障害者団体と強力なネットワークを形成し、障害者の自立生活運動に多大な貢献をしてきた。特に、1980年のスウェーデン訪問、1981年(国際障害者年)のスウェーデン肢体不自由児者団体(RBU)の招聘等の国際交流や、県内各団体に働きかけを行った交通まちづくり活動(1984~)、埼玉障害者市民ネットワークの構築(1992~)、県庁アンテナショップ「かっぽ」の設置(1997~)など、県内広域の障害児の教育問題、就労支援にもリーダー的団体として積極的に関わっている。以上、埼玉県内の先駆的共生社会活動団体として、市民活動賞に相応しいものと評価する。

学会賞選考委員会
大森宣暁(委員長)、秋山哲男、磯部友彦、狩野徹、長谷川万由美、岩浦厚信

第八回(2017年度)学会賞 決定のお知らせ

2017年8月8日
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 会員各位
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 小山聡子

 学会賞選考委員会(磯部友彦委員長)による厳正な審査の結果、日本福祉のまちづくり学会、第八回学会賞受賞者を次のとおり決定しました。本件は理事会の承認を得ております。

 なお、表彰式は、2017年8月9日(水)17:00から愛知県東海市において、日本福祉のまちづくり学会第20回全国大会(東海大会)の行事として実施いたします。

(1) 学術賞

1)
代表者:長屋榮ー
長屋榮ー・鈴木博志(2016)
「中国西安市における高齢者福祉施設の入所意識、改善要望の地域別分析」
福祉のまちづくり研究 第18巻3号 2016年7月15日発行

○選考過程
 福祉のまちづくり研究(第17巻2号から第19巻1号)に掲載された11編の原著論文を対象とし、選考委員会で審議し、信頼性・妥当性・新規性・分野間連携等において総合的に優れた内容を有する論文として1編の論文を選定した。

○選考評
 本研究は、中国の内陸都市である西安市を対象に、高齢者福祉施設の統計資料と入所者へのアンケート調査を実施し、高齢者福祉施設への入所の実態と課題を地域や施設の種類の違いに着目して解析している。そして、施設への入所ニーズや課題が地域や施設の種類により異なることを見出し、高齢者福祉施設への入所を高める要因について整理している。海外での詳細な調査を実施し、その成果として貴重な知見が得られており、これを礎に国内外における当該分野の研究の発展が大いに期待できるものと評価できる。よって、学術賞に値するものと認められる。

(2) 市民活動賞

1)
活動名:大和鉄脚走行会
活動団体名:大和鉄脚走行会
代表者:加藤弘明(日下病院整形外科医長)

○選考過程
 2016年12月27日付け会告により、募集開始。各支部長等にも推薦依頼。2月9日に応募の締め切り。応募件数2件。選考委員会内でのメール審議により、以下の項目に基づいて、表彰対象を吟味。「主体の当事者性」、「活動開始と継続の経緯」、「具体的活動内容と実施の頻度と年数」、「多様な人々の連携のあるなし及び関与する人数」、「展開する活動の内容とバラエティ・活動の成果(質的量的な波及効果)」、「他の類似活動と比較した場合の優位性」。選考委員会で審議し、上記の1件を表彰に値すると選定した。

○選考評
 義足ユーザーのスポーツ活動支援のために、義足ユーザーとその家族、医師、理学療法士、作業療法士、義肢装具士、義肢メーカーなどのエンジニア、福祉活動家、市民ランナーなど、楽しみたい人が集まって、立場の枠を気にせず仲間として一緒に活動している会である。月1回のペースで三重県内のグランドで練習会を開催している。東海地区のみならず広島県からの参加者もいるという広域的な活動になりつつある。さらに、スポーツを手掛かりに義足ユーザーの社会参加に向けての支援活動も実施している。この中からパラリンピアンも誕生している。義足ユーザーを対象にした活動はいまだに希少であり、今後のバラスポーツの普及においても存在意義が高い。よって、大和鉄脚走行会は、市民活動賞に値するものと判断する。

学会賞選考委員会
磯部友彦(委員長)、大森宣暁、狩野徹、鎌田実、髙橋儀平(特別委員)

第七回(2016年度)学会賞 決定のお知らせ

2016年7月4日
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 会員各位
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 秋山哲男

 学会賞選考委員会による厳正な審査の結果、日本福祉のまちづくり学会、第七回学会賞受賞者を次のとおり決定しました。
 なお、表彰式は、2016年8月5日(金)13:30から北海道函館市において、日本福祉のまちづくり学会第19回全国大会(函館大会)の行事として実施いたします。

(1) 学術賞
今回は選考を実施しませんでした。

(2) 市民活動賞
①活動名 障害平等研修の実施を通した障害者の社会参加の促進
 活動団体名 特定非営利活動法人障害平等研修フォーラム
 代表者 久野研二(国際協力機構)
②活動名 介助犬のひろば
 活動団体名 介助犬のひろば実行委員会
 代表者 剣持 悟(川村義肢株式会社)

○選考経過
 2016年2月17日付け会告により募集開始し、同年3月31日に応募を締め切った。各支部長等にも推薦依頼をした。申請のあった4点を審査し、上記の2点を表彰することに決定した。
 審査のポイントは基本事項(歴史や経過・活動場所・主体・対象者や対象物・活動内容・活動方法・成果)及び、活動の特徴(主体の当事者性・活動開始と継続の経緯・具体的活動内容と実施の頻度と年数・多様な人々の連携のあるなしとその規模・活動の内容とバラエティ・活動の波及効果・他の類似活動からの優位性)であり、これらを総合的に判断した。

○選考評
 ①活動名 障害平等研修の実施を通した障害者の社会参加の促進
 障害者自らの活動であり、障害者がファシリテーターとして研修の進行役を担い、障害者が直面する日常的な問題について、自ら考え、気づき、発見する研修活動である。全国的に展開する活動として定着している。これらのことが市民活動として高く評価できる。
 ②活動名 介助犬のひろば
 介助犬が広げる可能性について市民に向けてアピールする活動であり、そのメンバーは地域や職域を越えて様々な業界のリーダーが結集している。また、運営資金は市内の事業者から寄付を募り,100%民間資本で運営している。大阪府大東市で始まり、全国的に展開しつつある。これらのことが市民活動として高く評価できる。

学会賞選考委員会
磯部友彦(委員長)、大森宣暁、狩野徹、鎌田実、髙橋儀平(特別委員)

第六回(2015年度)学会賞 決定のお知らせ

2015年7月10日
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 会員各位
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 秋山哲男

学会賞選考委員会による厳正な審査の結果、日本福祉のまちづくり学会、第六回学会賞受賞者を次のとおり決定しました。
なお、表彰式は、2015年8月8日(土)18:00から東京大学柏キャンパスにおいて、日本福祉のまちづくり学会第18回全国大会(柏大会)の行事として実施いたします。

(1) 学術賞:
 1)代表者:砂川尊範
砂川尊範、鈴木清、土井健司(2014)
「歩道清掃状態が歩行者の安全性と快適性に及ぼす心理・行動的影響に関する研究」福祉のまちづくり研究 第16巻3号 2014年11月15日発行
○選考経過
 福祉のまちづくり研究(第15巻3号から第17巻1号)に掲載された14編の原著論文を対象とし、信頼性・妥当性・新規性・分野間連携等において総合的に優れた内容を有する論文として1編の論文を選定した。
○選考評
 種々の施設のハード整備については整備基準の整理等がなされ、それに基づいた施設整備が進められている。しかし、維持管理等のあり方については未だ課題が多く残されている。本論文は、様々な人々が共同利用する歩道の管理のひとつである清掃について着目し、適正な実験を企画・実施し、そのデータの分析に基づく有用な結論を導きだしている。

(2) 市民活動賞
 1)活動名:愛知TRYの活動
代表者:近藤佑次(「愛知TRY」実行委員会・実行委員長)、佐藤元紀(社会福祉法人AJU自立の家 障害者ヘルパーステーション・マイライフ刈谷・所長)、平山晶士(愛知県重度障害者の生活をよくする会・会長)
 2)活動名:地域福祉ネットワークの構築と防災教育活動の取り組み
代表者:NPO法人 FOR YOUにこにこの家
○選考経過
 2015年1月23日付け会告により募集開始し、同年3月31日に応募を締め切った。各支部長等にも推薦依頼をした。申請のあった6点を審査し、上記の2点を表彰することに決定した。
 審査のポイントは基本事項(歴史や経過・活動場所・主体・対象者や対象物・活動内容・活動方法・成果)及び、活動の特徴(主体の当事者性・活動開始と継続の経緯・具体的活動内容と実施の頻度と年数・多様な人々の連携のあるなしとその規模・活動の内容とバラエティ・活動の波及効果・他の類似活動からの優位性)であり、これらを総合的に判断した。書類審査の上、必要な所には現地調査を加え決定した。
○選考評
 1)活動名:愛知TRYの活動
 「差別をなくそう愛知から」をキャッチフレーズに、障害者差別解消法の周知及び、愛知県・名古屋市での障害者差別禁止条例制定をめざして、若手の障害当事者たちが中心となって立ち上がった団体およびその活動であり、現在も発展的継続的な活動として進められている。愛知県内各地のお店(テナント)をまわり、「お手伝いします」ステッカーを貼ってもらう活動を展開するなど、市民に障害者差別解消法の啓発や入りやすいお店を増やす取り組みを行っている。これはマスコミに数多く取り上げられ、市民の協力も広がってきている。障害者差別解消法の実施に向けた当事者自らの活動として高く評価できる。
 2)活動名:地域福祉ネットワークの構築と防災教育活動の取り組み
 仙台市太白区内の高齢者・障害者・児童・地域関係17団体と『ほっとネットin東中田』を立ち上げ、全ての人が安心して生活できる地域を目指した地域交流活動を行っている。東日本大震災以降は、仙台市と共に市民協働による地域防災推進のための「仙台発そなえゲーム」を開発し、防災教育活動も行っている。第3回国連防災世界会議のパブリック・フォームでは、「市民協働と防災」に関するシンポジウム等を行い、仙台から世界に向けて震災の教訓を発信した。福祉のまちづくりに関する市民活動であって、継続的な取り組みによってその成果が優れていると評価できる。

学会賞選考委員会
磯部友彦(委員長)、今西正義、大森宣暁、狩野徹、鎌田実、髙橋儀平(特別委員)、小山聡子(オブザーバー)

第五回(2014年度)学会賞 決定のお知らせ

2014年12月23日
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 会員各位
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 秋山哲男

学会賞選考委員会による厳正な審査の結果、日本福祉のまちづくり学会、第五回学会賞受賞者を次のとおり決定しました。

(1) 学術賞:
学会誌に掲載の査読論文が既定の本数に達していないため、審査を見送りとした。
 (理事会にて学術賞は2-3年に1回と決定済み)

(2) 市民活動賞
申請のあった7点を審査し、次の2点を表彰することに決定した。
①「ほっとはうす」を中心とした水俣の地域づくり活動
代表者:加藤タケ子(社会福祉法人さかえの杜代表理事・ほっとはうす施設長)
②「Check A Toilet みんなで作るUDトイレマップ」
代表者:金子健二(特定非営利法人Check代表理事)

○選考経過
6人の選考委員(磯部友彦、今西正義、小山聡子、鎌田実、古瀬敏、田中直人)により、書類審査の上、必要な所には現地調査を加え決定した。

審査のポイントは基本事項(歴史や経過・活動場所・主体・対象者や対象物・活動内容・活動方法・成果)及び、活動の特徴(主体の当事者性・活動開始と継続の経緯・具体的活動内容と実施の頻度と年数・多様な人々の連携のあるなしとその規模・活動の内容とバラエティ・活動の波及効果・他の類似活動からの優位性)を総合的に判断した。

○選考評
①「ほっとはうす」を中心とした水俣の地域づくり活動
代表者:加藤タケ子(社会福祉法人さかえの杜代表理事・ほっとはうす施設長)
 1991年の水俣国際会議を契機とする胎児性・小児性水俣病患者による活動を前身として、1998年にできた共同作業所「ほっとはうす」を中心とした歴史経過を持つ活動である。共同作業所やケアホームを持つなど、障害当事者自身による当事者を対象とする活動であると同時に、水俣病という社会問題について独自のプログラムに基づいた啓発活動を行うことを通して、地域住民との交流や連携ができている。
 また、上記施設は地元山林の木材を利用するとともに、バリアフリーデザインを実現した。このように、継続期間の長さ及び当事者の主体性と地域社会への影響波及という双方向性及び物理的なバリアフリーという多面的な活動が高く評価された。
②「Check A Toilet みんなで作るUDトイレマップ」
代表者:金子健二(特定非営利法人Check代表理事)
 多様な人の外出に安心をもたらすユニバーサルなトイレの配置について、情報を共有するとともに、新たに有効なトイレが出来たり発見したりした場合に、インターネットを通じて誰でも情報提供ができ、トイレマップとしての情報が共有できるシステムを基幹とする活動である。教育機関の授業で地域情報を共有する取り組みも行っている。
 スタートは2007年からであり、比較的若い活動であるが、2014年8月には52,000件の情報を共有しており、今後も自治体や事業者、一般市民からの情報登録や更新により自動的に成長していく仕組みを持っている。GoogleマップやNAVITIME等の大手地図サービスやカーナビと連携もしており、こうしたシステム構築自体が高く評価された。

第四回(2013年度)学会賞、市民活動賞は該当なし

第三回(2012年度)学会賞 決定のお知らせ

2012年12月15日
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 会員各位
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 高橋儀平

学会賞選考委員会による厳正な審査の結果、第三回日本福祉のまちづくり学会賞受賞者を次のとおり決定しました。

(1) 学術賞:
①代表者:澤田 有希
澤田 有希・橋本 美芽(2011)
「回復期リハビリテーション病棟に勤務する作業療法士が行う住環境整備の業務内容に関する研究」福祉のまちづくり研究 第13巻第3号
② 代表者:植田 瑞昌
植田 瑞昌・三浦 春菜・三谷 千瀬・野村 歓(2012)
「乳幼児の排便後始末に関する現状と課題~子育て層のオストメイト用汚物流しの共同利用に向けての考察~」福祉のまちづくり研究 第14巻2号

(2) 市民活動賞
①遠野市仮設住宅 希望の郷「絆」
代表者:狩野 徹(岩手県立大学)、鎌田 実(東京大学)
②お茶の水UD研究会
代表者:井上 賢治

○選考経過
6人の選考委員(秋山哲男、古瀬敏、小山聡子、磯部友彦、今西正義、清水政司)により以下の2つの賞を決定した。
(1)学術賞
選考委員会は、学会誌にこれまで掲載された査読付き論文を審査対象として審査(1位3点、2位2点、3位1点として各委員が推薦した)を行い、まず優れた上位3論文を選定した。最終的に最も多くの点数を得た上位2論文を表彰することに決定した。
(2)市民活動賞
 市民活動賞は、申請2点、委員会推薦1点を審査し、2点を表彰することに決定した。

○選考評
(1)学術賞
①代表者:澤田 有希
澤田 有希・橋本 美芽(2011)
「回復期リハビリテーション病棟に勤務する作業療法士が行う住環境整備の業務内容に関する研究」福祉のまちづくり研究 第13巻第3号
本論は作業療法士(OT)が入院から退院までの住環境整備に関して行う業務について詳細なデータを用いて丁寧な分析を行い、どの様にかかわっているかそのプロセスを詳細に示し、住環境整備のために作業療法士が中心的な役割を果たしていることを明らかにしている。つまりリ、ハ工学と建築学の立場からの住環境整備の橋渡しをする試みを行った研究として高く評価できる。
②代表者:植田 瑞昌
植田 瑞昌・三浦 春菜・三谷 千瀬・野村 歓(2012)
「乳幼児の排便後始末に関する現状と課題~子育て層のオストメイト用汚物流しの共同利用に向けての考察~」福祉のまちづくり研究 第14巻2号
昨今の社会的状況を見ると、駅や建築物の車いす使用者用トイレは、車いす使用者などの障害者だけでなく、高齢者、子ども連れなどによる利用も増えている。そのために、トイレの利用において誰を優先するか、どの様に造るかなどの議論がある。しかしその実態はこれまで必ずしも十分把握されていなかった。
本論文では、子育て層の外出時利用のトイレに焦点を当て、排便の後始末についてアンケート調査から明らかにし、その設備として使えるオストメイト用汚物流し利用の可能性を明らかにし、多機能トイレが抱えている難題、つまり多様な利用者が集中することに対する優先順位の設定、そしてさまざまな設備の整備の方向性を示している。

(2) 市民活動賞
①遠野市仮設住宅 希望の郷「絆」
代表者:狩野 徹(岩手県立大学)、鎌田 実(東京大学)
市民活動という部分はやや弱いが、産官学共同による社会活動という視点が評価できる。この仮設住宅ができたのは、第一に、遠野市が震災前から後方支援を準備していたことによる。第二に、大学の研究者が災害に対して何か支援できないかという思いを実現するために5月に訪問し、その意思を市に提案した。さらに東京大学建築学科の計画・設計提案と岩手県立大学の被災地住宅についての細かな調査の知見が総合され、仮設住宅が実現した。
つまり、複数セクターの連携があり、地元木材の利用が考慮され、バリアフリーとコミュニティ形成の両方を視野に入れるなど、まさに福祉のまちづくりの先進的な試みを行ったことが高く評価される。
② お茶の水UD研究会
代表者:井上 賢治
ユニバーサルデザインの研究会を何年にもわたって継続的に開催し、ユニバーサルデザインの普及などに努めているだけでなく、井上眼科・柏瀬眼科などの具体的な設計においてもユニバーサルデザインの実践を試みていることが高く評価される。
なお、井上賢治・間瀬樹省・桑畑謙(福祉のまちづくり研究 第13巻2号)「ロービジョン者に配慮したクリニックのサイン計画―ユニバーサルデザインの考え方」は今回、論文賞の候補となったが、この論文も含め市民活動として評価することにした。

○震災復興活動支援事業報告会・理事会時(2013年3月18日)での授賞式

■学術賞
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澤田有希会員と髙橋儀平会長

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植田端昌会員と髙橋儀平会長

■市民活動賞
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希望の郷「絆」:鎌田実会員と髙橋儀平会長

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希望の郷「絆」:狩野徹会員

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お茶の水UD研究会:井上賢治会員と髙橋儀平会長

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全受賞者と髙橋儀平会長、秋山哲男学会賞選考委員長

●第二回(2011年度)学会賞 決定のお知らせ

2012年1月11日
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 髙橋 儀平

学会賞選考委員会による厳正なる審査の結果、第二回日本福祉のまちづくり学会の学会賞受賞者を次の通り決定しました。

(1)学術賞:
代表者 山岡俊一
山岡俊一、坂本淳、磯部友彦(2010)「相対的重要度と経済的価値を考慮した鉄道駅における昇降機設置の評価」『福祉のまちづくり研究』Vol.12 No.1/2 p1-p10

○学会賞授賞式

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(2)市民活動賞:該当無し

○選考経過
(1)学術賞:
選考委員会は、個別応募の論文・成果2件、そして学会誌にこれまで掲載された査読付き論文を審査の対象として審査を行いました。
個別応募論文・成果と学会誌掲載論文について、優先順位(1位3点、2位2点、3位1点)をつけて、それぞれ上位3論文までを各審査員が選ぶこととしました。最終的に、多くの点数を得た論文1編を表彰することに決定しました。

(1)市民活動賞:
推薦された2つの活動業績につき、市民活動としてどう評価するかについての議論を踏まえて検討した結果、該当無し、と決定しました。

○選考評
(1) 学術賞:
代表者 山岡俊一
山岡俊一、坂本淳、磯部友彦(2010)「相対的重要度と経済的価値を考慮した鉄道駅における昇降機設置の評価」『福祉のまちづくり研究』Vol.12 No.1/2 p1-p10
市民の暮らしの基本を支える交通インフラストラクチャを使えるようにするという意思表明が交通バリアフリー法(現・バリアフリー法)であるが、その具体的な現れの一つが駅での昇降装置設置になる。しかし、現実問題としては予算などとの兼ね合いもあり、どの駅から優先的に設置していくかも考えねばならない。
この論文は、広島県下のJR駅を対象として、住民によるエレベーター、エスカレーター設置の要望と、そのために各人がどれほどの負担をする用意があるかを、アンケート調査によって検討したものである。単に欲しいという願望だけでなく、その設置のためにはどの程度まで経済的な負担をしてもいいと人々が考えているかを定量的に示したものであり、問題へのアプローチ、手法、そして考察に至るまで的確にまとめられていて、高く評価できる論文と認められる。

(2)市民活動賞:賞を創設した趣旨に照らして、今年度は該当無しと決定した

●第一回(2010年度)学会賞 決定のお知らせ

2011年2月1日
日本福祉のまちづくり学会
学会長 髙橋 儀平

学会賞選考委員会による厳正なる審査の結果、第一回日本福祉のまちづくり学会の学会賞受賞者を次の通り決定しました。

(1)学術賞:
代表者 江守央
江守央、伊澤岬、横山哲、駒林秀明(2006)「交通バリアフリー法基本構想策定後の継続的な市民参加のまちづくりに関する考察」『福祉のまちづくり研究』Vol.8 No.1 p31-37

(選考評)
市民の暮らしの基本を支える交通インフラストラクチャのありようを根本的に変えようという意思表明が交通バリアフリー法であるが、その仕組みに基づいて主要な交通結節点を中心としたバリアフリー基本構想が作成されても、果たしてそれが期待どおりに実現されていくかどうかは定かではない。
この論文では筆者らが構想作成に関与した自治体における継続的な活動を通じて、基本構想に描かれた姿が着実に実現されるための市民運動のあり方を提言しており、他の自治体での運動の参考になること多大である。問題へのアプローチ、手法、そして成果の表現に至るまで的確にまとめられており、本学会設立の基本理念である当事者参加の実例を示したものとして高く評価できる論文と認められる。

(2)市民活動賞:
わがやネット(児玉道子)
家具類の転倒防止対策推進のための実践的、方法論的研究-災害時要援護者へのボランティア活動「かぐてんぼう隊」運動の拡大に向けて-

(選考評)
本学会設立の直接的なきっかけは、阪神淡路大震災において障害者や高齢者が「災害弱者(=災害時要援護者)」であることを強く意識させられたことにある。この問題を解決するのは容易ではないが、まず手をつけるべきことがいくつかある。その一つが地震による直接的な被害を軽減することで、それには住宅自体の耐震性能を向上させることが第一だが、住宅がつぶれなくてもそれでことが済むわけではない。住宅そのものは無事でも、十分な地震対策を行っていない家具が倒れてきてその下敷きとなって死傷する場合もあり、そうでなくても家具が転倒することで足の踏み場もない自宅から一時的にせよ避難所に移行せざるを得ないことも起きる。しかしながら、住まい手側にこの視点での問題意識は高いとは言いがたい。
今回市民活動賞に応募があった「わがやネット」では、それらの問題意識を踏まえ、災害時要援護者の住宅における家具の転倒防止に的を絞り、ボランティア活動として家具の固定を積極的に行っている。その数年にわたる活動内容と実績、また学生を巻き込んだ活動形態など、大きな組織に依らずとも市民として具体的に何ができるかのひとつの例を示したものとして高く評価できる。