去る7月11日、千代田区立いきいきプラザ一番町において「福祉のまちづくり研究会」 ・プログラムの発足総会(総会参加者170名)と研究会発足記念シンポジウム(シンポジウム参加者227名)が開催された。
これまで、高齢者や障害者も含めた住みやすい社会の実現を目指して、さまざまの分野で研究や実践が図られ、それぞれの現場において鋭意、取り組みが進められてきたが、本格的な高齢社会の到来を目前にして、効果的に生活環境整備を進めるためには、各分野を有機的に結びつけた総合的な検討が求められている。
「福祉のまちづくり研究会」は、阪神淡路大震災のシンポジウムでの邂逅を契機として、この様な状況認識を同じくする研究者が中心となって1年半の準備検討を経て、今回発足したものである。
本研究会は上記の趣旨から建築・都市計画、造園学、土木工学、医学、リハビリテーション工学、人間工学、理学療法学・作業療法学、情報・通信工学、社会学、社会福祉学、経済学、法律学など市民の生活基盤づくりに関する全ての分野の人々が結集し、市民生活の機会均等と向上を目指した新たな「福祉のまちづくり研究」の枠組み、具体の研究・技術開発に向けた取り組みを進めていくことを狙いとしている。
当日のプログラムは以下の通りであった。
一番ヶ瀬康子氏の講演要旨は以下の通り。
なお、氏は総会において当研究会会長に選任された。 当研究会の標榜している当事者参加に期待している。人間は自ら自分を実現しながら生きていく事が理想であり、その実現の為に社会が努力することが社会福祉。福祉とは本来、天寿を全うし喜びに与ることを意味したが、明治以来の富国強兵、戦後の経済成長追求の流れの中で、福祉と言えば、身寄りのない気の毒な低所得者をお世話する特殊な対策と見なされてきた。ケアの方法も遠隔地の大規模施設に分断、隔離収容であった。福祉教育も、宗教的な観点で一部の私立で行われて来ただけで、国公立では無視されてきた。1980年代以降、反省が起こり、地域の中で共に人間として共生することを目指す動きが出てきた。誰もが何処でも好みの場所に住み、やりたいことをやると言うのは人権保障そのものである。
福祉のまちづくりに関して3つの視点がある。
・ ハード整備(建築・土木)の問題
日本は欧米に比し遅れている。相変わらずの歩道橋文化。住宅も持ち家中心の為、改造できるかどうかは、個人の経済条件、家族状況に左右される。ハートビル法も対象となる公共的建築物の範囲、罰則等、障害を持つアメリカ人法(ADA)と比べると弱い。外国で出来ることが、これだけ豊かな日本で何故、実現しないのか。
・ 制度的な側面(公的な裏付け)の問題
ハートビル法と地方公共団体の福祉条例しかない。まだ点のレベルでしかない。
・ 専門家の問題
養護学校教育の故に、建築、土木、法律等、専門分野を学ぶエリート達は障害者に接することがない。この様な状況で、どれだけ障害者への配慮が可能なのか。スウェーデンでは、建築法の制定に際し建築家が積極的に参画。ゴールドプランにより老人福祉施設の整備が進むが、道路等アクセス関係が駄目。高齢者、障害者の真の要求をしっかり把握する必要がある。当事者の要求を理論化する専門家集団であって欲しい。学際的な情報交換、協力が進めば福祉のまちづくりも進む。
21世紀のまちづくりに望まれるのは
・ 高齢者福祉としての街並み保存
高齢者にとって住み慣れた街の存続は、人生の生き甲斐である。
・ 総合性、協同性の確保
当事者や当事者を代弁できるヘルパーの人達と共にハード整備を考える。その際、各専門分野の学風の違いを乗り越えて総合性、協同性を確保することが必要。科学の成果を人間の愛に役立てることが求められている。
・ 地域性の尊重
中央に偏した活動ではなく、情報公開、情報提供、地方での活動が重要。まちづくりに当たって、コミュニティの基礎単位である日常生活圏域からの発想も益々求められる。
パネリストにより、各専門分野の福祉のまちづくりの到達点と残された課題の報告の後、ユーザー側としてのコメンテーターからコメントする形式でパネルディスカッションが行われた。その内容を詳述する余裕はないが、各分野の課題と主要なコメントを紹介する。
〈課題〉建築
土木工学
地域生活支援
〈コメント要旨〉
〈総合討論の要旨〉
一般参加者からの意見を含め、専門分野の研究者と福祉現場の実務者の立場の相違が濃厚に表れたが、研究会の趣旨からも当然予想されたことであった。共通認識の醸成と共通言語の確立が望まれる。
会 長 | 一番ヶ瀬 康子 | (長崎純心大学) | |
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副会長 | 澤村 誠志 | (兵庫県社会福祉事業団総合リハビリテーションセンター) | (第1順位) |
〃 | 野村 歓 | (日本大学) | (第2順位) |
〃 | 清水 浩志郎 | (秋田大学) | (第3順位) |
総務委員長兼事務局長 | 高橋 儀平 | (東洋大学) | |
企画委員会委員長 | 秋山 哲男 | (東京都立大学) | |
広報委員会委員長 | 古瀬 敏 | (建設省建築研究所) | (渉外兼務) |
論文委員会委員長 | 野村 歓 | (兼任) | |
幹 事 | 三星 昭宏 | (近畿大学) | (事務局長補佐、渉外) |
〃 | 尾上 浩二 | (中部障害者解放センター) | |
〃 | 小山 聡子 | (日本女子大学) | |
〃 | 河合 俊宏 | (埼玉県総合リハビリテーションセンター) | |
〃 | 北野 誠一 | (桃山学院大学) | |
〃 | 木村 一裕 | (秋田大学) | |
〃 | 相良 二朗 | (兵庫県福祉のまちづくり工学研究所) | |
〃 | 田中 直人 | (摂南大学) | |
〃 | 徳田 哲男 | (東京都老人総合研究所) | |
〃 | 新田 保次 | (大阪大学) | |
〃 | 林 隆史 | (国土開発技術研究センター) | |
〃 | 藤井 直人 | (神奈川県総合リハビリテーションセンター) | |
〃 | 三澤 了 | (DPI日本会議) | |
〃 | 八藤後 猛 | (日本大学) | |
〃 | 山田 稔 | (茨城大学) | |
〃 | 吉川 和徳 | (板橋区立おとしより保健福祉センター) | |
〃 | 和田 光一 | (東京都福祉機器総合センター) | |
〃 | 渡辺 慎一 | (横浜市総合リハビリテーションセンター) | |
監 事 | 稗田 祐史 | (国土開発技術研究センター) | |
〃 | 村田 稔 | (村田法律事務所) |
◎総務委員会
委員長兼事務局長 高橋儀平
事務局長補佐 三星昭宏
会 計 藤井直人、林隆史
委 員 足立啓(和歌山大)、阿部祥子(北海道女子大)、飯田克弘(大阪大)、狩野徹(東京都老人総合研究所)、堀田昭博(宝塚造形芸術大)、和田光一(東京都福祉機器総合センター)、山田稔(茨城大学) 事務局委員 安達万里子、竹本由美(国土開発技術研究センター)
◎企画委員会
委員長 秋山哲男
副委員長 田中直人(摂南大)
委 員 磯部友彦(中部大)、小山聡子(日本女子大)、岡田明(大阪市立大)、河合俊宏(埼玉総合リハセンター)、定藤丈弘(大阪府立大)、相良二郎(兵庫県福祉のまちづくり研究所)、富田昌夫(神奈川総合リハセンター)、日比野正巳(東洋大)、米崎二郎(大阪市障害更正文化協会)、八藤後猛(日本大)
◎広報委員会
委員長 古瀬敏(建設省建築研究所)
委 員 木村一裕(秋田大)、園田眞理子(明治大)、徳田哲男(東京都老人総合研究所)、古田恒輔(大阪看護大)、沼尻恵子(国土開発技術研究センター)、新田保次(大阪大)、布田健(建設省建築研究所)、橋詰努(東京都福祉機器総合センター)、吉川和徳(板橋区立おとしより保健福祉センター)、渡辺慎一(横浜総合リハセンター)<
◎論文集編集委員会
委員長 野村歓
委 員 三星昭宏、新田保次、古瀬敏、橋詰努、徳田哲男、青木主税、北誠一
◎ 総務委員会(事務局)業務
総会、役員会、幹事会、委員長会議の招集事務(通知、出欠確認)等、庶務業務(研究会運営、会則全般の業務、会員の入退会事務、会員名簿作成等)、渉外業務(他学会、団体、マスコミ、その他の問い合わせ等)、会計業務(予算、決算等)
◎ 企画委員会
全国大会、地方大会(支部主催を除く)、研究会、講習会等各種事業の立案と運営、その他企画に関わる業務
◎ 広報委員会
ニュースレターの発行、宣伝用パンフレットの作成、会誌の編集、その他広報に関わる業務
◎ 論文集編集委員会
論文の公募、公募論文の審査委員会の設置、論文集の発行、その他論文編集に関わる業務
日 時: 平成9年9月17日(水) 18:00〜21:00
場 所: (財)国土開発技術研究センター
出席者: 一番ヶ瀬、澤村、野村、高橋、秋山、古瀬、河合、木村、相良、徳田、新田、林、藤井、八藤後、吉川、渡辺、稗田、村田
議事要旨: (→は今後の作業担当者を示す)
一番ヶ瀬会長、澤村副会長、野村副会長より挨拶があり、各参加者自己紹介があった。
一番ヶ瀬会長より、高橋事務局長の議長への推薦があり了承された。高橋議長より木村、河合を記録者として指名され了承された。
(1) 入会状況、会費納入状況 資料1を基に林より説明があり、了承された。
'98年度会費については、よびかけ人の内で2年度分の納入をしたものである。
会費の納入をしたが所属のわからない「イワサキ コウヘイ」さんは、名簿に載せる事 とする。
(2) 人事関係
資料2を基に高橋より説明があり、以下のようにする事となった。
役員に障害を持っている人として委員長会議で推薦された、尾上氏と三澤氏を幹事とする。
顧問は各分野を2名の上限として人選し、以後は会長に一任する。
評議員は各分野を3名の上限として人選し、以後は会長に一任する。但し学会移行時には、会則上役割を再検討をする。
資料どおり委員会を人選する。業務については本日の検討は省略する。
(3) 平成9年度修正予算案
資料3を基に藤井より説明があり、了承された。
委員会費については、再検討となった。
(4) 福祉のまちづくり研究会会計規則案
資料4を基に林から説明があり、了承された。
資料4-2を各自記入し林まで提出することとなった。
(5) 平成9年度および平成10年度予定
資料5を基に秋山から説明があり、以下のように了承された。
平成10年の全国大会は日程、場所等確約は出来ないが、野村副会長が実行委員長となり、日本大学で開催という方向である。
大会準備委員会には、総務、企画、広報委員会の関東在住者が入る。
大会準備委員会のたたき台案は、秋山、八藤後、河合により作製する。
(6) 委員長会議の承認
高橋より説明があり、幹事も含めていくことで了承された。
(7) 平成10年度事務局について
高橋より説明があり、(財)バリアフリー財団に移行することで了承され、細部については、委員長会議に一任される。
(8) 関西グループ設立準備会資料
資料8を基に新田から説明があり、以下のように了承された。
事務局は、兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所におく。
シンポジウムの日本財団からの助成金額は100万円である。
次回会議は10月17日である。
「グループ」という名称でなく、「支部」とする。
(9) 論文編集委員会
資料6を基に野村副会長と八藤後より説明があり、了承された。
(10) 福祉のまちづくり研究会関係メイリングリストの運用について(案)
資料7を基に高橋より説明があり、了承され、細部については茨城大学山田氏に一任する。
(11) その他
学術研究団体への登録方法について、高橋より説明があった。
(1) 入会案内パンフレットについて
高橋から高橋より古瀬に案が渡る状況であると報告された。
(2) 研究会ニュース第2号の編集について
古瀬から10月いっぱいで発送できる状況であると報告された。
(3) 法人会員、賛助会員の募集について
林から資料9の物のデータ入力が済んだことが報告された。
本日到着した社協の送付範囲については、県、政令指定都市に現状では限ることとなった。
学会、団体に対しての募集については、吉川が調べてくることとなった。
下記企画案にて開催を検討中です。
「21世紀の関西の福祉のまちづくりの展開−震災をのりこえて−」
1) 基調講演 11:00〜12:00
2) 報告「福祉のまちづくりの現状と課題」 13:00〜15:00 (a) 兵庫県の福祉のまちづくり
(b) 地域ケアと福祉のまちづくり
(c) 福祉のまちづくりとボランティア活動
3) シンポジウム「21世紀の地平を切り開く」 15:00〜
司会/、メンバー/
日時 1997.3.9(月)または 11(水)
会場 建設交流館または大阪市国際交流センター