お知らせ

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第10回(2019年度)学会賞 決定のお知らせ

2019年07月09日

2019年7月9日
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 会員各位
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 小山聡子
学会賞選考委員会委員長 大森宣暁

学会賞選考委員会による厳正な審査の結果、日本福祉のまちづくり学会、第10回学会賞受賞者を次のとおり決定しました。

(1) 学術賞

○選考過程
 福祉のまちづくり研究(第19巻2号から第21巻1号)に掲載された10編の原著論文を対象とし、選考委員会で審議し、信頼性・妥当性・新規性・分野間連携等において総合的に優れた内容を有する論文として、1編を表彰に値すると判断した。

  1. 松村暢彦:『心のバリアフリー施策に関する行政担当者の意識構造』
    (福祉のまちづくり研究,  第19巻2号, 2017年7月15日発行)

○選考評
 本研究は、全国の市町村のバリアフリー担当者に対するアンケート調査によって、心のバリアフリー施策の実態を把握し、心のバリアフリー施策に関する行政担当者の意識構造を明らかにしたものである。分析の結果、行政担当者の自己効力感を高めることが心のバリアフリー施策の促進に重要であること、バリアフリー基本構想策定および事後評価が行政担当者のパーソナルネットワークの形成機会となり、自己効力感を高める上で実践的な方策であることを見出している。これまで研究が不十分であった心のバリアフリーに着目し、バリアフリー基本構想の意義や今後の展開の方向性など実務的にも有益な知見が得られた論文であると判断される。以上、学術賞に相応しいものと評価する。

(2)市民活動賞

○選考過程
 2018年12月14日付け会告により、募集開始。各支部長等にも推薦依頼。2月28日に応募の締め切り。応募件数3件。選考委員会内でのメール審議および現地調査により、「主体の当事者性」、「活動開始と継続の経緯」、「具体的活動内容と実施の頻度と年数」、「多様な人々の連携のあるなし及び関与する人数」、「展開する活動の内容とバラエティ・活動の成果(質的量的な波及効果)」、「他の類似活動と比較した場合の優位性」に基づいて、表彰対象を吟味。各委員からの意見を集約し、次の2件を表彰に値すると判断した。

  1. さっぽろ雪まつり福祉ボランティアハウス「ボランティアサークル手と手」の運営・継続
    活動団体名:特定非営利活動法人手と手
    代表者:代表理事 淺野目 祥子

○選考評
 1990年に、第41回さっぽろ雪まつり「ボランティアハウス」の運営に携わった方々が中心となって、その活動・運営を継続するため「ボランティアサークル手と手」を発足した。その後、さっぽろ雪まつり大通会場に「福祉ボランティアハウス」を設置し、障害当事者を含むサークルのメンバーが中心となって毎年ボランティアを募集し、介助が必要な雪まつり見学者と「一緒に雪まつりを楽しむ」ことをコンセプトに、車いす介助の他、雪用車いす、雪用杖、車いす防寒着の貸出やホテルまでの送迎など、約30年の長きに亘り活動・運営を継続的に行っている。その他、障害者の就労継続支援A型およびB型の多機能型事業所「就労支援センターしずく」の運営、ユニバーサルマンションの設置、学生・大学関係者と障害者の関わりを持つ場の創出として北海道大学総合博物館内のカフェとショップの運営、ネパール脊髄損傷スポーツ協会へ車いすを提供・運搬する活動、バリアフリー促進に向けた学校や企業等への講師派遣等、障害者の理解や自立に関する多様な活動に積極的に取り組んでいる。以上、市民活動賞に相応しいものと評価する。

  1. 発達障害当事者会主体の三位一体地域協働・共助活動
    活動団体名:
    熊本県発達障害当事者会Little bit
    NPO法人凸凹ライフデザイン
    発達協働センターよりみち
    代表者:共同代表  須藤雫・相良真央・山田裕一

○選考評
 2011年に設立された発達障害当事者主体の「発達障害当事者会Little bit」を起源とし、2015年に設立された「NPO法人凸凹ライフデザイン」、2016年に障害者の相談支援事業所として設立された「発達協働センターよりみち」の3団体による、地域協働・共助活動である。月2回の定例会の開催、講演会等の主催、民間企業との協働事業や全国の福祉・教育・医療行政機関から依頼を受けた研修の実施、行政委員への参画など、発達障害への理解を広める活動に取り組んでいる。2016年の熊本地震の際には、「発達障害者当事者マニュアル」の作成・配布による避難所生活をする発達障害者の支援、避難所生活が困難な当事者のために自宅を開放した「シェルター活動」など、3団体が連携して、行政や支援機関が手の届かなかった発達障害当事者への「共助活動」を行った。発達障害当事者間の連携活動の困難さにも拘わらず、複数の事業や団体をコーディネートさせながら、継続的に特色のある活動に取り組む数少ない成功例であり、社会への波及性に富んだ優れた市民活動である。以上、市民活動賞に相応しいものと評価する。

学会賞選考委員会
 大森宣暁(委員長)、秋山哲男、磯部友彦、狩野徹、長谷川万由美、岩浦厚信