5−2 学術研究委員会 5-2 学術研究委員会   委員長 水村 容子  (1)コメンテーター付き論文の実施 2017年度全国大会(東海)論文発表においてコメンテーター付き論文 (2)学会ならびに学会員の学術研究の質的向上を目指し、若手研究者の育成を行う事業を計画 (3)第3期特別研究委員会の活動を4月1日から開始 (4)各特別研究委員会の2017年度の予算は下記の通りです。 5-2-1 住民参画・社会環境特別研究委員会 委員長 長野 博一 (1)研究目的 現在我が国は少子高齢化時代に突入し、高齢者・障がい者・妊産婦や乳幼児連れ世帯等が生活しやすく、かつ移動しやすい環境整備が急務となっている。それと同時に、社会として移動制約者等への理解がまだまだ不足している状況に対し、気づきの意識啓発や1人ひとりへの『多様性の理解』と浸透は、緊急的に進めるべき社会環境としての大きな問題と捉えることが出来る。  また、これまでバリアフリー基本構想や福祉のまちづくり計画に対しては、住民参加の手法を取り入れ進めている状況が近年多数見られるが、実質的には行政が主導で行っているのが実情であり、また、個別事例の報告は多数挙げられているが、具体的な実践実例を積み上げ、そして検証することが求められている。  上記背景を踏まえ、本研究委員会では、住民参加・市民参画の具体的事例から、福祉のまちづくりにおける自助・共助・公助の視点で取り組む方策を議論し、多様性理解のための新たな手法を模索しつつ、今後の社会環境づくりへ向けた問題提起を行う。 (2)主な研究事業 1)公開研究会の開催 年2〜3回程度 2)福まち学会編「(仮)多様性への理解と当事者らが語る障害理解」書籍化へむけた取り組み 3)「福祉のまちづくりにおける住民参画の在り方に関する報告書」作成 4)その他見学会や視察等適宜実施 5)各種勉強会の実施 6)他委員会、および他学会の専門委員会とも随時連携し、これまでなかなかスポットがあたらなかった部分等へ積極的にアプローチする (3)その他 ・活動場所 関東(都内及び近郊) (29年度) 第6回公開研究会 (仮)障害理解を踏まえた社会環境整備 第7回公開研究会 (仮)住民参画と合意形成‐その4 ・制作物について、住民参加のまとめ作業を随時行なう ・書籍化について、学会長・事務局長と相談 (30年度) 第8回公開研究会 (仮)障害理解を踏まえた社会環境整備 第9回公開研究会 (仮)住民参画と合意形成‐その5 5-2-2 子育ち・子育てまちづくり特別研究委員会 委員長 植田 瑞昌 (1)研究目的 こどもの健やかな育ちと安全で安心できる子育てを支えられるまちづくりに関して、学会の学際的な特色を生かし領域横断的に調査・研究を行う。 (2)主な研究事業 活動はすべて会員以外にも公開し、広く子育ち・子育てまちづくりに関する情報発信、ならびに多くの参加者からの意見を聞けるようにする。 これまでの活動の中で作成した「あんぜんであんしんできる子育てのために〜子育ち・子育てバリアフリー教室」テキスト(改訂版)を用いて、および『子育ち・子育てバリアフリー教室』の試行と効果測定および子育ち・子育てのバリアフリーに向けての理解普及をさらに進めたい。 病児・障害児や複数児など、家族で行動する際に障壁を感じることの多い層の課題把握や安心して子連れで外出できる環境づくりの具体的な方策の研究を行いたい。 ・研究会(公開) 1〜2回程度実施 ・子育ち・子育てまちづくりセミナー 1回実施 ・その他見学会適宜 5-2-3 身体と空間特別研究委員会 委員長 原 利明 (1)研究目的 本委員会は、「身体と空間の関係性」の問い直しを研究動機とした。そこで視機能をはじめとする身体諸機能と生活空間との関係性や身体機能はもとより生活機能も考慮した多様な当事者の経験的事例を見直す。更にそれらの根拠となる情報の収集を行う。 これらに基づいた空間計画の手法を提案することを目的とする。 (2)主な研究事業 ・これまでの活動をまとめた本の出版(現在執筆中) ・出版記念連続セミナーの開催 ・公開研究会の開催 ・全国大会での研究討論会の開催 ・地方でのセミナーの開催 5-2-4 サイン環境特別研究委員会 委員長 田中 直人 (1)研究目的 高齢化や都市化の進展する中、多様な利用者にとって、安全快適でわかりやすい移動環境の実現が求められる。本委員会はこれに必要な人間と環境の生理的・心理的特性と環境の空間特性を考慮した基礎的研究の成果をとり上げ、さらにそれらを反映したデザイン手法の展開につなげる活動を主たる目的とする。 (2)主な研究事業 1)委員会の開催(年4回、関西にて) 2)既往研究についての勉強会(委員会開催時) 3)都心部におけるサイン環境調査 4)観光施設、競技施設等集客施設におけるサイン環境調査 5)研究成果についての研究会・シンポジュウムなどの開催 6)これまでの研究委員会の活動成果を反映した刊行物の発刊 5-2-5 心のバリアフリー特別研究委員会 委員長 中野 泰志 (1)課題認識 ・TOKYO2020に向けて、国、東京都、経済界、教育界等で「心のバリアフリー」の取組みが盛んになってきている。しかし「心のバリアフリー」についての定義や意味、目指すべき方向について共有されたものが無く“援助してあげる”“人にやさしくする”“意識の問題”等個人的な行いに帰着していく解釈も見られることから、新たな国民共有の概念規定とそれに基づく普及活動が急務と考える。 (2)研究目的 1)「心のバリアフリー」の定義の提案 ・社会モデルの観点を含む新たな心のバリアフリーの定義が求められている。心のバリアフリーの普及、市民レベルの実践を念頭におき、「心のバリアフリー」の新たな定義を検討し、提案する。 2)新たな「心のバリアフリー」の定義に基づく実践と検証 ・新たな「心のバリアフリー」の定義、普及方法、普及ツール等について、研究活動を通じ、実践と検証を行い深化させる。 3)新たな「心のバリアフリー」の普及方策の提案 ・TOKYO2020を目指して、オリパラのボランティア育成・研修等に反映させていくほか、大会以後のレガシーとして、新たな「心のバリアフリー」の全国への普及方策について提案する。 (3)主な研究事業 1)公的な機関の実施する「心のバリアフリー」関連事業との連携 2)公的団体との共同研究との連携 3)大学生の「心のバリアフリー」自主活動との連携 4)シンポジウム、セミナー等の公開研究会の開催 5)新たな「心のバリアフリー」の普及ツール(試案)の作成 5-2-6 地域福祉交通特別研究委員会 委員長 吉田 樹 (1)研究目的 2014年に示された『国土のグランドデザイン2050』(国土交通省)では,2050年に向けたわが国の国土づくりの理念として「対流促進型国土の形成」が謳われ,高齢化の進展や人口減少社会に直面するなかで,市民の交流機会を創出し,確保することが求められている。しかし,わが国の地方部では,商店など目的地施設の撤退や地域公共交通の衰退などを契機に,地域における「おでかけ」機会の減少が懸念されている。こうしたなか,近年ではICTの高度化により,デマンド交通や自家用車のシェアリング,小型モビリティなど,新たな「小さな交通」のシーズが生まれているが,ともすれば「シーズ先行」に陥りがちである。そのため,学術研究においては,コミュニティバスやタクシーなどの在来モードやスペシャル・トランスポート・サービス(STS)も含めた「小さな交通」を地域のなかでどのように機能させればよいのかを実証的に明らかにすることが求められている。  第三期の本特別研究委員会では,こうした課題に対応し,交通分野に止まらず,都市計画や公衆衛生,社会福祉など,多様な分野のメンバーが参画することで,地域福祉交通の計画手法や評価技術の構築,「小さな交通」を中心とした新たな地域福祉交通サービスのシステムやしくみづくりに関する提案を「実践知」に基づき推進することを目指す。 (2)主な研究事業 第三期の本特別研究委員会では,引き続き,委員会メンバーを中心とした研究会を開催するとともに,(外部資金の獲得を前提として)国内外の「小さな交通」に関する事例調査や社会実験を行う。また,メンバーの研究成果や実践知をアウトリーチする公開フォーラムを複数回開催する計画である。 1)定例研究会の開催(年2回程度;主に東京都内で開催) 2)国内外の「小さな交通」に関する事例調査,社会実験(外部資金の獲得を前提として) 3)全国大会の研究討論会および,公開フォーラムの開催 5-2-7 法制度特別研究委員会 委員長 男鹿 芳則 (1)研究目的 当委員会では、施行後の障害者差別解消法の現状と、各自治体の取り組み状況を調査研究し、環境面での差別事例とバリアフリー法や同法に基づく自治体の委任条例の基準との関係性や、合理的配慮の対応状況を把握することで、ソフト、ハードの両面から所謂「福祉のまちづくり条例」の可能性について調査研究を進めます。 今期の研究テーマは、下記の1〜3を予定しておりますが、これまでの活動を踏まえ、最終的には新委員の方々のご提案により設定していきたいと考えております。 1)障害者差別解消法の現状と、各自治体での取組状況 2)環境面での差別事例の現状調査 3)福祉のまちづくり条例の可能性ついて (2)主な研究事業 1)研究会・勉強会、2)調査、3)見学会、4)全国大会での研究討論会等を開催、を中心に展開していく予定です。 5-2-8 住まいと福祉コミュニティ特別研究委員会 委員長 水村 容子 (1)研究目的 超高齢化社会の進行、限界集落の出現と地方の衰退、空き家の増加など、住まいとコミュニティのあり方が問われている。特に高齢化対策として、厚生労働省では「地域包括ケアシステム」が、国土交通省や内閣府では「スマートウェルネスシティ」などの構想が提示されており、その中心的な役割を果たす場として「住まい」が位置づけられている。また、高齢化対策のみならず、障害者の地域生活への移行支援や子育て支援の観点からも、住まいとコミュニティの関係を改めて考え捉え直すことは危急な社会的要請である。こうした社会的背景を踏まえ、本研究会は活動目的を以下の通りに設定し、活動を展開する。 1)地域コミュニティでの居住継続に関する様々な情報を収集する。 2)福祉コミュニティに関する様々な事例・施策の情報を収集する。 3)これからの社会に必要な住まいの在り方を検討する。 4)住まいと福祉コミュニティの望ましい関係性を検討する。 (2)主な研究事業 1)委員による事例や施策に関する情報収集とそのとりまとめ作業(定例の委員会として、年2〜3回程度開催) 2)興味深い取組み事例や収集した情報などをもとに公開研究会の開催(年1〜2回開催)  初年度にスウェーデンより講師を招聘しての公開研究会を予定 5-2-9 国家資格等に関連する合理的配慮特別研究委員会 委員長 上野俊行 (1)研究目的・主な研究事業 障害者基本法の改正や障害者差別解消法をうけて建築・不動産関係、福祉関係、医療関係、法務・財務・総務関係などの多岐にわたる各種国家資格試験での障害者特別措置について、横断的に研究・分析し、障害者の社会参加に関する情報収集を行うことを目指して第二期特別研究委員会を実施した。 第二期は、第一期において得られた情報・知識から、具体的な方向が定まったので、障害者欠格条項をなくす会など先駆的な取り組みを行っている方々の講演会(2015年12月、東京)、本委員会委員による『合理的配慮〜資格試験での実情』の講演会(2016年3月、名古屋)により、現状の情報収集行うことができた。この現状の情報を基に、本委員会による『資格試験〜差別解消に向けて』を第19回全国大会(2016年8月、函館)において、研究討論会を行った。これにより、とくに資格取得前後での取り組みの重要性を確認することができ、本委員会の意義を得ることができた。 第三期・第四期では、各年数回の委員会の開催の他に、2回のシンポジウム(報告会)を予定している。内容としては、第一期・第二期で得られた情報をより体系的に研究・分析することを目的としている。具体的には、第一期・第二期においては資格取得前後の現状の情報収集にとどまっていたが、第三期・第四期においては各資格試験における対応だけではなく、資格取得前の学校・職場での支援、資格取得後の職場での支援・対応を知ることで、社会における障害者にとっての資格の意義などにも注目する。このような視点から、資格を取得・駆使して様々な活動を行っている障害者に対し訪問調査を行う予定である。 現段階において、29年度(第三期)の初回シンポジウムは5月下旬開催を予定しており、テーマは「障害のある教員」に関する研究者に登壇頂き、障害のある教員がどのように教員資格を取得したのか、職場での受け入れ状況はどのようであるか、資格取得後の変化などを当事者の立場からの情報収集を行う予定である。可能であれば、秋ぐらいに、福祉先進国の国々では障害者の資格に対し、どのようなスタンスで臨んでいるのかを、この分野の専門知識を有する国内の研究者から報告をしていただき、日本の資格制度自体についても分析する視野を持つ予定である。 第四期中に開催される30年度全国大会(2018年度)では本特別研究委員会において、第三期で収集した情報の研究・分析を行い、第一期・二期からのデータを総合して、本研究委員会主催で研究討論会を再び実施することを目指している。 5-2-10 文化財・世界遺産のアクセシビリティ特別研究委員会 委員長 高橋 儀平 (1)研究目的 急激な少子高齢化、高齢世代の観光行動の活発化、海外からの旅行者の増大、2020東京オリンピック・パラリンピックの開催等を控えて、日本における文化財・世界遺産の多面的なアクセシビリティの整備が求められている。 本研究会では、国内外の現地調査を基に「文化財・世界遺産のアクセシビリティ」について、各地の状況を調査し、我が国において標準的に考慮すべき文化財・世界遺産のアクセシビリティの考え方について整理し、我が国の文化財・世界遺産等観光施設のバリアフリー法整備、アクセシビリティ・ガイドラインの作成に資する基礎的資料を収集することを研究目的とする。本委員会は2期目となる。 (2)主な研究事業 1)文化財、世界遺産の保護とアクセシビリティの考え方の構築 2)文化財に関する各地のアクセシビリティ条例・基準の調査 3)用途や歴史、構法等日本文化の歴史的固有性、存在価値と具体的なアクセシビリティ事例の収集 4)海外ガイドラインの研究、海外先進事例の収集 5)国連障害者の権利条約、障害者差別解消法の施行を踏まえ、年齢、性別、国籍、障害の有無などにかかわらず、誰もが楽しめる文化財、世界遺産における多様なアクセシビリティ環境の構築を目指した物的、人的・ソフト面の検討 6)公開シンポジウム、研究会の開催